ECサイトを運営していると、どうしても売上が伸び悩む時期があります。季節要因や市場環境の変化など、様々な理由で売上が停滞することは珍しくありません。しかし、そんな「売れない時期」こそ、サイトの基盤強化や改善に取り組むチャンスでもあります。
この記事では、売上が下げ止まった時に実施すべき具体的な改善施策をチェックリスト形式でご紹介します。
目次
1. 現状分析:なぜ売れていないのか
まずは「なぜ売れていないのか」を客観的に分析することが重要です。感覚や思い込みではなく、データに基づいた分析を行いましょう。
□ アクセス数の確認
- □ 前年同期比でのアクセス数推移を確認
- □ 流入経路別のアクセス数変化を分析
- □ 新規訪問と再訪問の比率を確認
□ コンバージョン率の分析
- □ 全体のコンバージョン率の推移を確認
- □ デバイス別(PC/スマホ)のコンバージョン率比較
- □ 商品カテゴリ別のコンバージョン率比較
□ 顧客行動の詳細分析
- □ 直帰率の確認と高直帰ページの特定
- □ カート放棄率とその発生ポイントの特定
- □ ヒートマップによるユーザー行動の可視化
□ 外部環境の確認
- □ 競合サイトの動向チェック
- □ 業界全体のトレンド確認
- □ 季節要因の影響度合いの分析
実践ポイント:
アクセス解析ツール(Google アナリティクスなど)を活用し、少なくとも過去3ヶ月分のデータを分析しましょう。特に「変化点」に注目し、いつから、どのような指標が変化したのかを明確にすることが重要です。
2. サイト内部の改善施策
売れない時期こそ、サイト内部の改善に取り組むべき時です。ユーザー体験を向上させる以下の施策をチェックしましょう。
□ サイトスピードの最適化
- □ Google PageSpeed Insightsでのスコア確認
- □ 画像の最適化(圧縮、適切なサイズ設定)
- □ 不要なプラグインや重いスクリプトの削除
- □ キャッシュ設定の見直し
□ 商品ページの改善
- □ 商品画像の品質と枚数の見直し
- □ 商品説明文の充実(ベネフィット訴求の強化)
- □ レビュー・口コミの活用と表示方法の最適化
- □ 関連商品・おすすめ商品の表示ロジック見直し
□ 購入導線の最適化
- □ カート〜決済までのステップ数の見直し
- □ 各ステップでの離脱率確認と改善
- □ 送料や決済方法の明示タイミングの最適化
- □ スマホでの操作性向上(ボタンサイズ、配置など)
□ 検索機能の強化
- □ サイト内検索の使いやすさ確認
- □ 検索結果の表示方法の最適化
- □ 検索キーワード分析と「0件結果」の対策
- □ オートコンプリート機能の追加検討
実践ポイント:
特にモバイルユーザーの体験を重視しましょう。現在はほとんどのECサイトでスマホからのアクセスが過半数を占めています。スマホでの操作性や視認性を優先的に改善することで、大きな効果が期待できます。
3. 商品戦略の見直し
売れない時期は、商品ラインナップや価格戦略を見直す良い機会です。
□ 商品ラインナップの分析
- □ ABC分析による商品の貢献度確認
- Aランク(売上上位20%の商品)
- Bランク(売上中位30%の商品)
- Cランク(売上下位50%の商品)
- □ 粗利率と販売数のバランス分析
- □ 長期間売れていない商品の特定と対策検討
□ 価格戦略の見直し
- □ 競合との価格比較分析
- □ 価格帯別の販売動向確認
- □ 心理的価格設定(999円など)の効果検証
- □ 送料無料ラインの最適化検討
□ 商品の見せ方改善
- □ 商品カテゴリ構成の見直し
- □ 特集ページ・コレクションページの作成
- □ 季節に合わせた商品の前面配置
- □ ストーリー性のある商品紹介の強化
□ 新商品・限定商品の企画
- □ 顧客ニーズに基づく新商品開発
- □ 期間限定商品の企画
- □ 既存商品のリニューアル検討
- □ セット商品・バンドル商品の開発
実践ポイント:
特にAランク商品(売上上位20%)に注力することが効果的です。これらの商品の露出を増やし、関連商品を充実させることで、効率的に売上を伸ばすことができます。同時に、Cランク商品(売上下位50%)の整理や改善も検討しましょう。
4. 顧客コミュニケーションの強化
既存顧客とのコミュニケーションを強化することで、リピート購入を促進しましょう。
□ メールマーケティングの強化
- □ セグメント別のメール配信設計
- □ 開封率・クリック率の分析と改善
- □ 自動メールシーケンスの構築
- ウェルカムメール
- カート放棄フォローメール
- 購入後のフォローアップメール
- □ パーソナライズドメールの導入検討
□ SNSコミュニケーションの活性化
- □ 各SNSの投稿内容と頻度の見直し
- □ エンゲージメント率の高い投稿タイプの分析
- □ ユーザー参加型コンテンツの企画
- □ インフルエンサー連携の検討
□ LINEマーケティングの強化
- □ LINE公式アカウントの運用最適化
- □ リッチメニューの設計見直し
- □ セグメント配信の活用
- □ クーポン配布戦略の見直し
□ 顧客サポートの強化
- □ 問い合わせ対応の迅速化
- □ FAQ・ヘルプページの充実
- □ チャットサポートの導入検討
- □ 顧客の声を商品開発に活かす仕組み構築
実践ポイント:
既存顧客へのアプローチは、新規顧客獲得よりもコストが低く効果が高いことが多いです。特に過去3ヶ月以内に購入した顧客へのフォローアップを重点的に行いましょう。また、顧客からの問い合わせ内容を分析し、よくある質問や不満点を商品・サイト改善に活かすことも重要です。
5. 集客施策の再構築
アクセス数に課題がある場合は、集客施策の見直しが必要です。
□ SEO対策の強化
- □ キーワード戦略の見直し
- □ 商品ページのSEO最適化
- タイトルタグの改善
- メタディスクリプションの最適化
- 構造化データの実装
- □ コンテンツマーケティングの強化
- ブログ記事の充実
- ハウツーコンテンツの作成
- ユーザー生成コンテンツの活用
- □ 内部リンク構造の最適化
□ 広告運用の見直し
- □ 広告パフォーマンスの詳細分析
- □ ターゲティングの見直し
- □ クリエイティブの改善
- □ 広告予算配分の最適化
- □ 新規広告チャネルの検討
□ SNSマーケティングの再構築
- □ 各SNSプラットフォームの役割明確化
- □ コンテンツカレンダーの作成
- □ ハッシュタグ戦略の見直し
- □ UGC(ユーザー生成コンテンツ)の促進
□ アフィリエイト・提携施策の強化
- □ アフィリエイトプログラムの見直し
- □ 優良アフィリエイターとの関係強化
- □ 他社ECサイトとのクロスプロモーション検討
- □ 業界インフルエンサーとの協業検討
実践ポイント:
各集客チャネルのROI(投資対効果)を計算し、効果の高いチャネルに集中投資することが重要です。また、短期的な売上向上だけでなく、中長期的なブランド構築につながる施策(コンテンツマーケティングなど)にも取り組みましょう。
6. 内部オペレーションの最適化
売れない時期は、内部業務の効率化にも取り組むべき時です。
□ 在庫管理の最適化
- □ 死に筋商品の特定と処分検討
- □ 適正在庫レベルの見直し
- □ 発注サイクル・発注量の最適化
- □ 季節商品の入出庫計画の見直し
□ 物流・配送の効率化
- □ 梱包資材・方法の見直し
- □ 配送業者・配送方法の再検討
- □ 出荷作業の効率化
- □ 返品・交換プロセスの改善
□ コスト構造の見直し
- □ 固定費の削減可能性検討
- □ 変動費の最適化
- □ 仕入れ条件の再交渉
- □ 業務の自動化・効率化検討
□ チーム体制・スキルの強化
- □ 業務分担の見直し
- □ 必要なスキルの特定と育成計画
- □ 外部リソース活用の検討
- □ ナレッジ共有の仕組み構築
実践ポイント:
売上が伸び悩む時期こそ、内部の無駄を省き、効率化を進めるチャンスです。特に在庫管理は重要で、過剰在庫は資金繰りを圧迫し、品切れは機会損失につながります。データに基づいた適正在庫レベルの設定を心がけましょう。
7. 売れない時期を乗り越えるマインドセット
最後に、売れない時期を乗り越えるためのマインドセットについて考えましょう。
□ 長期的視点の維持
- □ 短期的な売上だけでなく、顧客生涯価値(LTV)を重視
- □ ブランド構築は一朝一夕にはできないことを理解
- □ 「種まき」と「収穫」のサイクルを意識
□ データに基づく意思決定
- □ 感覚や思い込みではなく、データを重視
- □ 小さな改善を積み重ねる姿勢
- □ A/Bテストなど検証文化の醸成
□ 顧客視点の徹底
- □ 自社視点ではなく顧客視点でサイトを評価
- □ 顧客の声に真摯に耳を傾ける姿勢
- □ 「何を売りたいか」より「顧客は何を求めているか」を重視
□ 学習と適応の継続
- □ 業界トレンドの継続的な学習
- □ 競合分析からの学び
- □ 失敗からの学習と迅速な軌道修正
実践ポイント:
売れない時期は誰しも不安になりますが、この時期をビジネスの基盤強化のチャンスと捉えましょう。特に顧客との関係構築に注力することで、市場環境が改善した際に大きく飛躍することができます。
まとめ:下げ止まりから成長軌道へ
売上が下げ止まった時期は、ECサイト運営者にとって試練の時ですが、同時に基盤強化のチャンスでもあります。この記事で紹介したチェックリストを活用し、自社の状況に合わせた改善施策を実施してください。
重要なのは、「何から手をつければよいか」を明確にし、優先順位をつけて取り組むことです。すべての施策を一度に実施することは現実的ではありません。まずは現状分析を徹底し、最も効果が見込める施策から着手しましょう。
また、改善は一度で完了するものではなく、継続的なPDCAサイクルを回すことが重要です。小さな改善を積み重ね、データに基づいて効果を検証しながら、着実に成長軌道へと戻していきましょう。
売れない時期を乗り越え、より強固なECビジネスを構築するための第一歩として、このチェックリストをぜひご活用ください。